キスはあいさつ、SEXは遊び。
そんなこと、分かっていたのに。
でもそんな男の行動一つに、浮かれて泣いて……バカみたい。
実咲はぽたぽたとあふれてきた涙を無造作にぐいっと拭った。
「ほんと、バカ……」
涙で震える声で呟いた。
分かっていたのに、そんな人だって。
でも、それでも信じたかった、自分だけは特別だと。
嫌なことから全部目をそらして、耳をふさいで、考えない・・・

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帰ってきた部屋の中は嫌になるほど静かで、自分の息づかいがやけに響いて聞こえた。
ベッドに体を埋め込むように投げ出して、力一杯さんざん泣いた。
叫びたい気持ちのまま、布団と枕に顔を埋めて実咲は声を上げた。胸に渦巻く気持ちを吐き出すように、泣けるだけ泣いてやろうと、力一杯泣いた。
さんざん泣きわめくと、泣いて暴れている自分が滑稽に思えてきて力が抜けた。
むくりと体を起こすと、実咲は自・・・

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「おはようございまーす」
研究室に男の声が響いた。
実咲は試験管を揺する手を止める。顔を上げて入り口に立つ男の顔を見た。
雅貴。
実咲の心臓が突然どくどくと音を立てて騒ぎ出した。
「おはよう」
わずかに声がかすれた。
「あれ? 今研究室にいるの、実咲だけ?」
実咲以外いない事に気付くと、雅貴はとたんに砕けた様子になりにこにこしながら入ってくる。
「みんな現場に行ってる・・・

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