鉄骨の上に薄く溜まった水の上を夜風が走り、ネオンの青が丸い波紋に揺らめいた。工事現場の足場の下で風雨を避けながら、真黒い空を見上げる。街が明るければ明るいほど、空は暗さを増すような気がする。こんな雨の夜は、特に。
ばたばたと翻るビニールシートから冷え切った水滴が降ってくる。高く響く女の笑い声が風にのって微かに聞こえる。繁華街の片隅にひっそりと佇む建設中の小さなビル。身を隠すように蹲って、寒さ・・・

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日高幸村(ひだかゆきむら)は息を詰めて目の前の男を凝視していた。
瞬きをすれは消えてくれるかと何度も瞼を閉じてみたけれど、男は消えない。どうやら夢ではないようだ。全身の痛みと部屋に充満する酒臭さは馴染んだものだが、呼吸が触れるほど近くに居る男の存在については記憶の棚のどこにも在庫がない。そもそも入荷した覚えもない。
男は険しい顔をしていた。時折、小さく呻いて顔をしかめる。目を覚ましたのだ・・・

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目玉焼きはご丁寧にもきっちり両面焼きだった。テーブルの上に並べられた三つをどれだけ見比べても、何か違いがあるようには見えない。焼き加減を訊ねられた気がしたのだが、気のせいだったのか。
大量の水で薬を流し込んだ逸郎は幸村の隣でぐったりしている。逸郎の前には女が座り、女の隣には大きな羊のぬいぐるみ。四人掛けのダイニングテーブルは満席だった。
どうやらここは古いアパートらしい。がらがらと音をた・・・

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